薄毛対策として用いられるスプレータイプの製品には、大きく分けて二つの種類があります。一つは前述した「増毛スプレー(増毛剤)」、そしてもう一つが「育毛剤・発毛剤スプレー」です。この二つは目的も働きも全く異なるため、その違いを正しく理解しておくことが非常に重要です。まず「増毛スプレー」は、薄毛部分に微細な着色繊維や粉末を付着させることで、髪の毛を太く見せたり、地肌を隠したりして、一時的に髪が増えたように見せる「化粧品」や「雑貨」に分類される製品です。その効果は即効性がありますが、あくまで見た目を変えるためのものであり、髪の毛そのものを育てたり、増やしたりする効果はありません。シャンプーで洗い流せば元の状態に戻ります。一方、「育毛剤・発毛剤スプレー」は、頭皮環境を整えたり、毛髪の成長を促進したりすることを目的とした「医薬部外品」や「医薬品」に分類される製品です。頭皮に直接スプレーし、有効成分を浸透させることで効果を発揮します。「育毛剤」の主な目的は、頭皮の血行促進、保湿、抗炎症などによって、現在生えている髪を健康に保ち、抜け毛を予防し、髪が育ちやすい環境を整えることです。フケやかゆみを抑える効果を持つものもあります。「発毛剤」は、さらに進んで、新たな髪の毛を生やし、成長させる効果が医学的に認められているものです。代表的な有効成分としてミノキシジルなどが挙げられます。これらの育毛・発毛剤スプレーは、増毛スプレーのような即効性はなく、効果を実感するまでには数ヶ月単位の継続使用が必要です。また、効果の現れ方には個人差があります。どちらのスプレーを選ぶべきかは、あなたの目的によって全く異なります。今すぐ見た目をカバーしたいのであれば増毛スプレー、時間をかけて頭皮環境を改善し、抜け毛予防や発毛を目指したいのであれば育毛・発毛剤スプレー、という選択になります。両者の違いを理解し、自分の悩みに合った製品を選びましょう。
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