鏡を見るたびに気になる、額の生え際の後退や前髪全体のボリュームダウン。いわゆる「前髪のはげ」は、多くの男性にとって深刻な悩みの種です。なぜ、他の部分よりも前髪から薄毛が進行しやすいのでしょうか。その原因を理解することは、適切な対策を考える上で非常に重要です。最も大きな原因として考えられるのが、男性型脱毛症(AGA)の影響です。AGAは遺伝的要因と男性ホルモンが関与して発症する進行性の脱毛症で、特に前頭部(おでこ)と頭頂部の毛髪が影響を受けやすいという特徴があります。これは、前頭部の毛包(毛根を包む組織)に、AGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)を作り出す酵素「5αリダクターゼ」が多く存在し、かつDHTを受け取る「アンドロゲン受容体」の感受性が高いためと考えられています。DHTが受容体と結合すると、髪の成長期が短縮され、髪が太く長く育つ前に抜け落ちてしまいます。これが繰り返されることで、前髪部分の毛が細く短くなり、徐々に地肌が透けて見えるようになるのです。特に、生え際の両サイドから後退していく「M字型」の薄毛は、AGAの典型的な初期症状とされています。AGA以外にも、前髪の薄毛に影響を与える要因は考えられます。例えば、生活習慣の乱れです。睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、過度なストレスなどは、頭皮の血行不良を招き、髪の成長に必要な栄養が届きにくくなる原因となります。また、喫煙も血管を収縮させ血行を悪化させるため、髪の健康にはマイナスです。さらに、不適切なヘアケアも影響することがあります。洗浄力の強すぎるシャンプーや、頭皮をゴシゴシ擦るような洗い方は、頭皮環境を悪化させる可能性があります。また、常に前髪を強く引っ張るような髪型をしていると、牽引性脱毛症を引き起こすことも考えられます。しかし、多くの場合、成人男性の前髪の薄毛の主な原因はAGAである可能性が高いと言えます。自分の状態がどの原因によるものかを見極めることが、効果的な対策への第一歩となるでしょう。
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