薄毛や抜け毛の原因は、男性型脱毛症（ＡＧＡ）や円形脱毛症だけではありません。体の内部の健康状態の変化や、服用している薬が原因で、一時的あるいは慢性的に髪が抜けてしまうケースもあります。これらの脱毛症は、原因を特定し、それを取り除くことで改善が期待できる場合が多いのが特徴です。まず、考えられるのが「内分泌疾患（ホルモン異常）」による脱毛です。特に「甲状腺機能異常」は、脱毛の原因として比較的よく知られています。甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を調節する重要なホルモンであり、その分泌が過剰になる「甲状腺機能亢進症（バセドウ病など）」でも、逆に低下する「甲状腺機能低下症（橋本病など）」でも、ヘアサイクルに影響を与え、びまん性（全体的）な脱毛を引き起こすことがあります。元の病気を治療することで、脱毛も改善することが期待されます。「栄養障害」も脱毛の原因となりえます。髪の毛はタンパク質からできており、その成長には亜鉛、鉄、ビタミン類など様々な栄養素が必要です。過度なダイエットや偏った食生活によってこれらの栄養素が不足すると、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。特に女性に多い「鉄欠乏性貧血」は、脱毛の原因となることが知られています。食事内容の見直しや、必要に応じてサプリメントでの補給、貧血の治療などが必要です。また、「薬剤性脱毛症」といって、服用している薬の副作用として脱毛が起こることもあります。抗がん剤による脱毛はよく知られていますが、それ以外にも、抗うつ薬、高血圧治療薬、脂質異常症治療薬、抗凝固薬など、様々な種類の薬で脱毛が報告されています。原因薬剤の中止や変更が可能であれば、脱毛は改善する可能性があります。ただし、自己判断で薬を中止するのは危険ですので、必ず処方医に相談してください。その他、手術後や出産後、高熱を出した後などに、一時的に抜け毛が急増する「休止期脱毛」と呼ばれる状態もあります。これは、体が大きなストレスを受けたことへの反応と考えられ、通常は数ヶ月で自然に回復します。このように、脱毛の原因は多岐にわたります。もし、急に抜け毛が増えたり、原因不明の薄毛が進行したりした場合は、ＡＧＡや円形脱毛症だけでなく、これらの可能性も考慮に入れ、内科や皮膚科を受診し、原因を調べてもらうことが重要です。