６０代を迎え、ふと鏡を見たときに感じる髪の変化。若い頃のようなボリュームがなくなり、地肌が透けて見える部分が増えたと感じる男性は少なくありません。６０代の薄毛は、単なる老化現象として片付けられがちですが、その背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、最も大きな要因として挙げられるのが、男性型脱毛症（ＡＧＡ）です。ＡＧＡは遺伝や男性ホルモンの影響で起こる進行性の脱毛症であり、年齢とともにその影響が現れやすくなります。若い頃から緩やかに進行していたものが、６０代になってより顕著になるケースは非常に多いのです。ＡＧＡの場合、生え際の後退や頭頂部の薄毛といった特徴的なパターンが見られます。次に、加齢による自然な変化も影響します。年齢を重ねると、髪の毛を作り出す毛母細胞の働きが徐々に衰え、ヘアサイクル（毛周期）における成長期が短くなったり、髪の毛そのものが細くなったりします。これにより、髪全体のボリュームが減少し、薄くなったように感じられるのです。また、長年の生活習慣の積み重ねも無視できません。偏った食生活による栄養不足、睡眠不足、ストレス、喫煙などは、頭皮の血行を悪化させ、髪の健康に悪影響を与える可能性があります。若い頃は体力でカバーできていたとしても、６０代になるとその影響が表面化しやすくなるのです。さらに、持病や服用している薬の影響で薄毛が起こることもあります。高血圧や糖尿病などの生活習慣病は血行に影響を与えますし、薬によっては副作用として脱毛を引き起こすものもあります。このように、６０代男性の薄毛の原因は一つではなく、複数の要因が複合的に関わっている場合がほとんどです。大切なのは、自分の状態を客観的に把握し、悲観的になりすぎず、現実的な対策を考えることです。原因を理解し、受け入れることから、前向きな向き合い方が始まります。