抜け毛や薄毛とともに、頭皮のベタつき、かゆみ、そして湿った大きなフケが気になる。もしこのような症状があるなら、それは「脂漏性脱毛症」のサインかもしれません。これは、頭皮の炎症である「脂漏性皮膚炎」に伴って起こる脱毛症であり、男性型脱毛症（ＡＧＡ）とは原因も対処法も異なります。脂漏性脱毛症の根本には、頭皮の皮脂の過剰な分泌と、皮膚の常在菌である「マラセチア菌」の異常増殖があります。マラセチア菌は、皮脂を栄養源として増殖し、その代謝物が頭皮を刺激して炎症を引き起こします。これが脂漏性皮膚炎です。頭皮に炎症が起こると、毛穴周辺の環境が悪化し、毛根にもダメージが及びます。その結果、髪の毛の正常な成長サイクルが妨げられ、抜け毛が増えたり、髪が細くなったりして、薄毛の状態（脂漏性脱毛症）に至るのです。脂漏性脱毛症の特徴的な症状は、脱毛に加えて、頭皮の赤み、かゆみ、そして黄色っぽく湿った、やや大きめのフケが多く見られることです。皮脂が多い部分は炎症を起こしやすく、特に生え際、頭頂部、耳の後ろなどに症状が出やすい傾向があります。ＡＧＡのように特定のパターンで進行するわけではなく、頭部全体的に薄くなることもあります。脂漏性脱毛症のケアと対策で最も重要なのは、原因となっている脂漏性皮膚炎を改善することです。まずは、頭皮を清潔に保つことが基本となります。ただし、皮脂を取り除こうとして洗浄力の強すぎるシャンプーでゴシゴシ洗いすぎると、かえって頭皮を刺激し、皮脂の分泌を促してしまう可能性もあります。低刺激性のシャンプーを選び、指の腹で優しく洗い、すすぎを十分に行うことが大切です。マラセチア菌の増殖を抑える効果のある抗真菌成分（ミコナゾール硝酸塩、ケトコナゾールなど）が配合された薬用シャンプーを使用することも有効です。皮膚科を受診すれば、炎症を抑えるためのステロイド外用薬や、抗真菌薬などが処方されることもあります。また、生活習慣の見直しも重要です。脂肪分や糖分の多い食事は皮脂の分泌を増やす可能性があるため、バランスの取れた食事を心がけましょう。ビタミンＢ群は皮脂の分泌をコントロールする働きがあるため、積極的に摂取したい栄養素です。十分な睡眠を取り、ストレスを溜めないことも、皮脂バランスを整える上で大切です。脂漏性脱毛症は、適切なケアと治療を行えば改善が期待できる脱毛症です。