おでこが広くなってきた、生え際が後退してきたと感じる場合、その原因として最も考えられるのが「男性型脱毛症(AGA)」です。AGAは成人男性に最も多く見られる脱毛症であり、進行性のため、放置すると薄毛は徐々に広がっていきます。もしおでこの変化が気になるなら、AGAの可能性について正しく理解しておくことが重要です。AGAは、遺伝的要因と男性ホルモン(特にジヒドロテストステロン、DHT)の影響によって発症します。DHTが毛根にある受容体と結合することで、髪の成長期が短縮され、髪が細く短くなり(軟毛化)、最終的には抜け落ちてしまいます。このDHTの影響を特に受けやすいのが、前頭部(おでこ)と頭頂部の毛包なのです。そのため、AGAの典型的な症状として、額の生え際が後退したり、頭頂部が薄くなったりするパターンが見られます。おでこの後退に関しては、両サイドの剃り込み部分から後退していく「M字型」が非常に特徴的です。最初はわずかな後退でも、徐々にM字の角度が深くなっていくことがあります。また、M字にはならずに、生え際全体のラインが徐々に上がっていくパターンもあります。これらの生え際の変化は、単に「おでこが元々広い」のとは異なり、AGAが進行しているサインである可能性が高いと言えます。AGAかどうかを判断する他のポイントとしては、生え際の髪質の変化(細く柔らかくなる)、抜け毛の中に細く短い毛が増える、家族(特に父方・母方の男性親族)に薄毛の人がいる、などが挙げられます。もし、これらの特徴に当てはまるようであれば、AGAの可能性を考慮し、対策を検討する必要があります。AGAは自然に治ることはなく、進行を抑えるためには医学的な治療が必要となる場合が多いです。現在では、DHTの生成を抑える内服薬(フィナステリド、デュタステリド)や、発毛を促進する外用薬(ミノキシジル)など、有効性が認められた治療法があります。おでこの後退が気になり始めたら、「まだ大丈夫だろう」と放置せず、早めに皮膚科やAGA専門クリニックを受診し、医師の診断を仰ぐことが、将来の髪を守るための賢明な選択と言えるでしょう。