前髪の生え際の後退や前頭部の薄毛が進行し、セルフケアだけでは改善が見られない場合、男性型脱毛症(AGA)の可能性が高く、専門的な治療を検討する段階かもしれません。AGAは進行性の疾患であり、放置すれば薄毛は徐々に広がっていきます。しかし、現在では医学的に有効性が認められた治療法が存在し、早期に治療を開始すれば、進行を食い止めたり、改善を図ったりすることが可能です。特に前髪部分の薄毛に対して、どのような治療の選択肢があるのでしょうか。AGA治療の中心となるのは薬物療法です。内服薬としては、「フィナステリド」や「デュタステリド」といった5αリダクターゼ阻害薬が用いられます。これらはAGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑制する働きがあり、特に前頭部の毛包に多いとされるⅡ型の5αリダクターゼをターゲットにしています。DHTの働きを抑えることで、ヘアサイクルを正常化させ、抜け毛を減らし、細くなった髪を太くする効果が期待されます。現状維持や軽度の改善を目指す、いわば「守り」の治療と言えます。一方、外用薬(塗り薬)としては、「ミノキシジル」が代表的です。ミノキシジルは頭皮の血行を促進し、毛母細胞を活性化させることで発毛を促す効果が期待されます。細くなった髪を太く長く成長させ、新たな発毛をサポートする「攻め」の治療薬と位置付けられます。前髪部分のAGA治療においては、この内服薬とミノキシジル外用薬を併用することが一般的です。DHTを抑制して抜け毛を防ぎつつ、ミノキシジルで発毛を促すという、両面からのアプローチにより、より高い治療効果を目指します。ただし、これらの薬物療法は医師の処方や指導のもとで行う必要があり、効果が出るまでには数ヶ月以上の継続が必要です。また、性機能関連や皮膚症状などの副作用のリスクも存在するため、治療開始前には医師から十分な説明を受け、理解しておくことが重要です。薬物療法で十分な効果が得られない場合や、より積極的な改善を望む場合には、「自毛植毛」という外科的な選択肢もあります。これは、後頭部などのAGAの影響を受けにくい部分から自身の毛髪を毛包ごと採取し、前髪などの薄くなった部分に移植する方法です。根本的な改善が期待できますが、費用が高額であることや、手術であるためのリスクも伴います。
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