40代、50代、そしてそれ以降。人生の経験を重ね、社会や家庭で重要な役割を担うことの多い中年期以降の男性にとって、男性型脱毛症(AGA)の発症は、避けて通れない課題となるケースが少なくありません。この年代になると、AGAの発症率はどのように変化し、どのような特徴が見られるのでしょうか。日本皮膚科学会のガイドラインによると、日本人男性のAGA発症率は、40代で約30%、50代以降では40%以上とされています。つまり、40代では約3人に1人、50代を過ぎると半数近く、あるいはそれ以上の男性がAGAを発症している可能性があるということです。20代、30代と比較して、発症率は明らかに上昇しており、AGAが加齢とともに進行しやすい疾患であることを示しています。この年代でAGAが顕著になる理由としては、まず長年にわたる男性ホルモン(DHT)の影響の蓄積が挙げられます。AGAになりやすい遺伝的素因を持つ人は、若い頃から少しずつDHTの影響を受け続けており、その影響が40代、50代になって目に見える形で現れてくるのです。また、加齢に伴う身体的な変化も影響します。年齢とともに、髪の毛を作り出す毛母細胞の働きは自然と低下し、ヘアサイクルにおける成長期も短くなる傾向があります。この加齢による変化とAGAの進行が重なることで、薄毛がより目立ちやすくなるのです。さらに、長年の生活習慣の影響も無視できません。喫煙や不規則な食生活、運動不足、ストレスなどが長期間続いている場合、頭皮の血行不良や栄養不足が慢性化し、髪の健康状態が悪化している可能性も考えられます。中年期以降にAGAを発症した場合、あるいは若い頃から進行していたAGAがこの年代でより顕著になった場合、治療に対する考え方も多様化してきます。積極的に治療を行い、改善を目指す人もいれば、ある程度は仕方ないと受け入れ、現状維持を目指す人、あるいは髪型などでカバーする人など、向き合い方は様々です。しかし、どのような選択をするにしても、AGAは進行性の疾患であるという事実は変わりません。もし現状維持や改善を望むのであれば、年齢に関わらず、専門医に相談し、適切な治療法(薬物療法など)を検討することが有効です。60代、70代であっても、治療によって効果が得られるケースは存在します。年齢を重ねても、諦めずに自分に合った対策を見つけることが大切です。