薄毛を自分で何とかしたいと考えたとき、ドラッグストアなどで手軽に購入できる「市販の育毛剤」の使用を検討する方は多いでしょう。様々な種類があり、効果を期待して試してみたくなりますが、セルフケアにおいて育毛剤はどのような位置づけで、どの程度の効果が期待できるのでしょうか。その役割と限界を正しく理解しておくことが大切です。まず理解しておきたいのは、市販されている育毛剤の多くは「医薬部外品」に分類されるということです。医薬部外品の育毛剤は、厚生労働省が効果・効能を認めた有効成分が一定濃度配合されており、その主な目的は「抜け毛の予防」「育毛・養毛」、そして「頭皮環境の改善」です。具体的には、頭皮の血行を促進する成分（センブリエキス、ビタミンＥ誘導体など）、毛母細胞の働きを助ける成分、フケやかゆみを抑える抗炎症成分（グリチルリチン酸ジカリウムなど）、頭皮に潤いを与える保湿成分などが配合されています。これらの成分が、髪が健やかに育つための頭皮環境を整え、今ある髪を維持し、抜け毛を防ぐことをサポートします。しかし、重要なのは、医薬部外品の育毛剤には、医薬品である「発毛剤」のように、新たに髪を生やす「発毛効果」は認められていないという点です。つまり、育毛剤は、髪の毛そのものを積極的に増やすというよりは、現状維持や抜け毛予防、頭皮環境の改善を主目的とした製品なのです。したがって、セルフケアにおける市販育毛剤の位置づけは、「頭皮環境を整え、抜け毛を予防するための補助的なケア」と考えるのが適切です。生活習慣の改善や正しいヘアケアといった基本的なセルフケアを行った上で、プラスアルファのケアとして取り入れるのが良いでしょう。特に、頭皮の乾燥やかゆみ、フケなどのトラブルがある場合には、それらに対応した成分を含む育毛剤を選ぶことで、症状の改善と抜け毛予防が期待できます。ただし、男性型脱毛症（ＡＧＡ）のように、遺伝やホルモンが原因で進行する薄毛の場合、市販の育毛剤だけで進行を食い止めたり、顕著な改善を得たりするのは難しいのが現実です。もしＡＧＡが疑われる場合は、育毛剤によるセルフケアに固執せず、早めに専門医に相談し、医学的根拠に基づいた治療（発毛剤や内服薬など）を検討することが重要になります。