AGA(男性型脱毛症)治療で広く用いられる内服薬、フィナステリド(プロペシアなど)やデュタステリド(ザガーロなど)。これらはAGAの原因物質であるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑えることで高い効果を発揮しますが、その一方で、副作用のリスクも指摘されています。特に男性が気になるのが「性機能への影響」でしょう。治療のデメリットとして、この点を正しく理解しておくことは不可欠です。フィナステリドやデュタステリドの臨床試験や市販後の調査において、副作用として報告されている性機能関連の症状には、主に「性欲減退(リビドー減退)」「勃起機能不全(ED)」「射精障害(射精量の減少など)」があります。これらの症状が現れるメカニズムは完全には解明されていませんが、DHTが男性機能の一部に関与していることや、薬剤がホルモンバランスに影響を与えることなどが関係している可能性が考えられています。ただし、これらの副作用の発生頻度は、決して高いものではありません。国内外の臨床試験データを見ると、発生頻度は数パーセント程度と報告されています。つまり、服用している人の多くは、これらの副作用を経験することなく治療を継続できています。また、副作用が現れた場合でも、その多くは軽度であり、服用を継続しているうちに症状が軽減したり消失したりするケースや、服用を中止すれば改善するケースがほとんどです。しかし、ごく稀に、服用中止後も症状が持続する「ポストフィナステリドシンドローム(PFS)」と呼ばれる状態が報告されています。ただし、PFSの存在やそのメカニズム、薬剤との明確な因果関係については、まだ科学的に確立されていない部分も多く、さらなる研究が必要です。性機能に関する副作用は、男性にとって非常にデリケートな問題であり、生活の質(QOL)にも大きく影響します。そのため、治療を開始する前には、必ず医師からこれらの副作用の可能性について十分な説明を受け、理解しておくことが重要です。そして、もし服用中に気になる症状が現れた場合は、決して自己判断せず、速やかに処方を受けた医師に相談してください。医師は症状の程度や状況に応じて、減量や薬剤の変更、あるいは治療の中止などを検討し、適切な対処を行ってくれます。副作用のリスクを正しく恐れ、適切に対処することが、安心して治療を続けるための鍵となります。
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