AGA(男性型脱毛症)では発症率に注目が集まりがちですが、実際には「どの程度まで進行しているのか」という進行度の割合も気になる点です。日本では進行度別の詳細な統一データは少ないものの、いくつかの研究や臨床現場の実感から傾向を推測することは可能です。AGAの進行度を分類する方法として、国際的に広く用いられているのが「ハミルトン・ノーウッド分類」です。これは、生え際の後退パターン(M字)と頭頂部の薄毛パターン(O字)の進行具合によって、Ⅰ型(正常)からⅦ型(最も進行した状態)までの7段階(さらに細分化される場合もある)に分類するものです。一般的に、数字が大きくなるほど進行度が高いことを示します。発症率のデータ(20代で10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で40%以上)を考えると、AGAを発症している人の中でも、その進行度にはばらつきがあることが予想されます。例えば、20代や30代で発症している人の多くは、まだ初期段階(ハミルトン・ノーウッド分類でⅡ型やⅢ型程度)である可能性が高いと考えられます。生え際が少し後退し始めた、あるいは頭頂部が少し薄くなってきた、というレベルです。しかし、中には若くして進行が早く、Ⅳ型やⅤ型程度まで進んでいる人もいるでしょう。一方、40代、50代以降になると、発症している人の割合が増えるだけでなく、進行度が高い人の割合も増加すると考えられます。長年にわたってAGAが進行してきた結果、Ⅳ型、Ⅴ型、あるいはそれ以上に進行している人の割合が、若い世代に比べて高くなるのは自然なことです。特に治療を受けていない場合、AGAは基本的に進行し続けるため、年齢とともに重症化するリスクは高まります。この進行度の割合を考える上で重要なのは、AGAは早期に治療を開始するほど、進行を食い止めやすく、改善の効果も得られやすいということです。初期段階であれば、薬物療法などによって進行を大幅に遅らせたり、現状維持を図ったりすることが十分に可能です。しかし、進行が進み、毛根の機能が著しく低下してしまうと、治療の効果も限定的になってしまいます。発症率だけでなく、進行度の割合という視点を持つことは、AGA対策の重要性、特に早期発見・早期治療の意義を改めて認識させてくれるでしょう。
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