かつて薄毛の悩みは中高年のもの、というイメージがありましたが、近年、20代や30代といった若い世代で男性型脱毛症(AGA)を発症し、深刻な悩みを抱える人が増えています。若くして始まる薄毛は、見た目の印象だけでなく、自信の喪失や精神的なストレスにも繋がりやすく、決して軽視できない問題です。「まだ若いから大丈夫」と思いがちですが、AGAの発症割合に関するデータは、その考えが必ずしも正しくないことを示しています。前述の通り、日本人男性におけるAGAの発症率は、20代で約10%、30代で約20%とされています。これは、20代男性の10人に1人、30代男性の5人に1人が、すでにAGAを発症している可能性があることを意味します。この数字は、決して他人事として片付けられるものではありません。若年層でAGAが発症する主な原因は、やはり遺伝的要因と男性ホルモン(DHT)の影響です。AGAになりやすい体質は遺伝するため、その素因を持つ人は、早い段階で症状が現れ始めることがあります。それに加えて、現代社会特有の生活環境も、若年性AGAの発症や進行を後押ししている可能性があります。例えば、不規則な生活リズム、睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、過度なストレス、喫煙習慣などです。これらの要因は、頭皮環境を悪化させたり、ホルモンバランスを乱したり、血行不良を引き起こしたりして、AGAの進行を助長する可能性があります。特に若い世代は、学業や就職、仕事、人間関係などでストレスを感じやすく、生活習慣も乱れがちになる傾向があるため、注意が必要です。若い時期にAGAを発症した場合、精神的なダメージが大きいだけでなく、放置すると将来的に薄毛がかなり進行してしまうリスクも高まります。しかし、逆に言えば、若い時期であれば毛根の機能がまだ活発である可能性が高く、早期に適切な治療を開始すれば、進行を効果的に抑制したり、改善したりできる可能性も高いと言えます。もし、20代や30代で、抜け毛の増加、髪質の変化(細くなる)、生え際の後退といったAGAの初期サインに気づいたら、「年のせいではない」「若くても起こりうる」という現実を認識し、できるだけ早く専門医に相談することが重要です。早期発見・早期対策が、将来の髪を守るための鍵となるのです。
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