正直、自分の頭頂部が薄くなってきたことには数年前から気づいていた。でも、まだ大丈夫だろう、と見て見ぬふり。しかし、ある日、急な同窓会の誘いが来たのだ。久しぶりに会う友人たちに、この薄くなった頭を見られるのは、さすがに抵抗がある。どうしようかと悩んでいた時、インターネットで「増毛スプレー」なるものの存在を知った。藁にもすがる思いで、ドラッグストアに走り、いくつかある製品の中から、自分の髪色に近い色のスプレーを一つ購入してみた。同窓会の当日、出かける前に、説明書を読みながら恐る恐る試してみることにした。鏡を見ながら、気になる頭頂部にシューッとスプレーする。最初は距離感が掴めず、一部に集中してかかってしまい、焦った。しかし、少し離して、円を描くように、少量ずつ吹き付けていくと、徐々にコツが掴めてきた。そして、スプレーし終わった後、鏡を見て驚いた。あれだけ気になっていた頭頂部の地肌の透け感が、ほとんど目立たなくなっている!髪の毛一本一本が太くなったような感じで、全体的にボリュームが出ているのだ。「すごい…!」思わず声が出た。もちろん、近くでじっくり見れば多少の違和感はあるのかもしれない。でも、ぱっと見では、ほとんど分からないレベルだ。仕上げに軽くヘアスプレーで固めて、いざ同窓会へ。会場では、久しぶりに会う友人たちとの会話に花が咲いた。以前なら、相手の視線が自分の頭にいっていないか、常に気になっていただろう。でも、その日は増毛スプレーのおかげで、不思議と自信を持って、堂々と振る舞うことができた。もちろん、汗をかいたり、頭をぶつけたりしないように、少しだけ気は使ったけれど。一日を終えて帰宅し、シャンプーでスプレーを洗い流すと、元の薄い頭頂部が現れた。その瞬間は少し現実に引き戻された気分になったが、同時に、あのスプレーがあったからこそ、今日一日を心から楽しめたのだと実感した。増毛スプレーは、根本的な解決策ではない。でも、急な用事や、どうしても見た目を整えたい時に、一時的に自信を与えてくれる、まさに「お守り」のような存在だと思った。これからも、ここぞという時には頼りにしたい。そして、いつかは根本的な対策も考えなければな、と改めて感じた一日だった。