男性型脱毛症(AGA)の治療を考え始めたとき、多くの方が気になるのが「どれくらいの期間、治療を続ければ良いのだろうか?」という点でしょう。結論から言うと、AGA治療は基本的に長期的な視点で取り組む必要があります。短期間で劇的な効果が現れるものではなく、根気強い継続が求められるのです。なぜAGA治療には時間がかかるのでしょうか。その理由は、髪の毛が生え変わるサイクル、いわゆる「ヘアサイクル」とAGAのメカニズムにあります。健康な髪の毛は、成長期(数年間)、退行期(数週間)、休止期(数ヶ月)というサイクルを繰り返しています。しかし、AGAを発症すると、男性ホルモン(DHT)の影響でこのヘアサイクルが乱れ、特に「成長期」が著しく短縮されてしまいます。髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまうため、徐々に薄毛が進行していくのです。AGA治療薬は、この乱れたヘアサイクルを正常な状態に戻すように働きかけます。例えば、内服薬のフィナステリドやデュタステリドはDHTの生成を抑え、外用薬のミノキシジルは毛母細胞を活性化させます。しかし、薬の効果によってヘアサイクルが改善され、新しい髪が生え、それが目に見える長さや太さに成長するには、どうしても時間がかかります。一般的に、治療効果を実感し始めるまでに最低でも3ヶ月から6ヶ月程度は必要とされています。そして重要なのは、AGAは進行性の疾患であるため、治療を中断すると、薬の効果がなくなり、再びヘアサイクルが乱れ、薄毛が進行してしまう可能性が高いということです。つまり、治療効果を維持するためには、薬の使用を継続する必要があるのです。AGA治療は、風邪薬のように症状が治まったら服用を止める、という性質のものではありません。「いつまで」という明確な終わりがあるわけではなく、効果を持続させたい期間、治療を続けるという考え方が基本になります。この「長期戦」という認識を持つことが、AGA治療と向き合う上でまず大切な心構えと言えるでしょう。
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