長年連れ添った妻に「あなた、最近てっぺんが寂しくなってきたわね」と、言われたのが始まりだった。自分ではあまり気にしていなかったつもりだが、言われてみれば、洗面台の鏡に映る自分の頭頂部が、以前よりも心なしか頼りなく見えた。若い頃は髪の量も多く、フサフサしているのが自慢だっただけに、少しショックだったのを覚えている。とはいえ、もう60歳過ぎだ。今さら髪のことで悩んでも仕方がない、と最初は自分に言い聞かせていた。しかし、同窓会などで久しぶりに友人に会うと、同じように薄毛が進行している者もいれば、まだまだ若々しい髪を保っている者もいる。比べてしまう自分がいることに気づき、何とも言えない気持ちになった。このまま何もしないでいるのも癪だな、と思い立ち、まずは情報収集から始めてみた。インターネットで「60代 薄毛 対策」などと検索すると、出るわ出るわ、様々な情報が。育毛剤、シャンプー、サプリメント、クリニックでの治療…。正直、どれが本当に効果があるのか、さっぱり分からない。とりあえず、手軽に始められそうな育毛シャンプーを試してみることにした。数ヶ月使ってみたが、特に変化は感じられない。やはりこんなものか、と諦めかけた時、息子が「親父、最近元気ないけど、髪のこと気にしてるなら、一度ちゃんと病院で診てもらったら?」と言ってくれた。少し恥ずかしかったが、息子の後押しもあり、皮膚科を受診してみることにした。医師の診断は、やはり「男性型脱毛症(AGA)」だった。そして、治療薬についての説明を受けた。副作用のリスクもあるとのことだったが、医師と相談し、まずは外用薬のミノキシジルから試してみることにした。毎日、朝晩、欠かさず頭皮に塗布する。最初は面倒だったが、これも自分への投資だと思って続けた。3ヶ月、半年と経つうちに、少しずつだが変化を感じ始めた。抜け毛が減り、細かった髪に少しコシが出てきたような気がするのだ。劇的に増えたわけではないが、少なくとも進行は食い止められているようだ。それと同時に、食事や睡眠にも気を配るようになった。髪のためだけでなく、健康のためにも良いことだ。薄毛と向き合うことは、自分の体と生活を見つめ直す良いきっかけになったと思う。今では、薄毛を完全に克服したわけではないが、以前のように深刻に悩むことはなくなった。むしろ、努力している自分を少し誇らしくさえ思う。

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