ある日突然、鏡を見て驚く。頭にコインのような円形や楕円形の「ハゲ」ができている。これは「円形脱毛症」と呼ばれる病気で、年齢や性別に関わらず誰にでも起こりうる脱毛症です。男性型脱毛症(AGA)とは異なり、その原因や症状の現れ方には独自の特徴があります。円形脱毛症の最も大きな特徴は、その名の通り、境界がはっきりとした円形または楕円形の脱毛斑が突然現れることです。大きさは10円玉程度のものから、もっと大きなものまで様々です。脱毛斑は1箇所だけの場合(単発型)もあれば、複数箇所に同時に現れる場合(多発型)もあります。進行すると、脱毛斑同士が融合して大きな不規則な形になったり、頭部全体の髪が抜けてしまう「全頭型」、さらには眉毛、まつ毛、体毛など全身の毛が抜ける「汎発型」といった重症なケースに至ることもあります。円形脱毛症の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、現在最も有力視されているのは「自己免疫疾患」説です。何らかのきっかけで免疫システムに異常が生じ、本来体を守るはずの免疫細胞(Tリンパ球など)が、自分の毛根組織を異物とみなして攻撃してしまうことで、毛根がダメージを受け、髪が抜けてしまうと考えられています。なぜ免疫異常が起こるのか、そのきっかけは明確ではありませんが、精神的なストレス、肉体的な疲労、感染症、遺伝的素因などが誘因となる可能性が指摘されています。ただし、ストレスが直接的な原因であるとは断定できず、あくまで発症のきっかけの一つと考えられています。AGAとの大きな違いは、その発症の仕方とパターンです。AGAは男性ホルモンの影響で特定の部位からゆっくりと進行するのに対し、円形脱毛症は原因が異なり、突然、境界明瞭な脱毛斑が現れます。また、円形脱毛症の脱毛斑の皮膚は、炎症などがない限り、通常は正常に見えます。多くの場合、円形脱毛症は自然に治癒することもありますが、症状が広がったり、繰り返したりすることもあります。治療法としては、ステロイド外用薬や注射、紫外線療法、局所免疫療法などがありますが、症状の範囲や重症度によって選択されます。円形脱毛症は見た目のインパクトが大きく、精神的な負担も大きい疾患です。もし円形の脱毛斑に気づいたら、自己判断せずに早めに皮膚科を受診し、正しい診断と適切な治療を受けることが大切です。