インターネットや雑誌広告を見ると、「このサプリで髪がフサフサに!」「飲むだけで薄毛の悩みが解決」といった、魅力的な言葉が並んでいます。AGA治療薬の副作用を心配する人や、手軽に対策を始めたい人にとって、これらのAGAサプリは救世主のように見えるかもしれません。しかし、「サプリメントだけでAGAは改善しますか?」という問いに対する答えは、残念ながら、明確に「No」です。この事実から目を背け、サプリメントに過度な期待を寄せることは、貴重な時間とお金を無駄にするだけでなく、あなたの薄毛をさらに進行させてしまう、非常に大きなリスクをはらんでいます。その理由は、AGAが単なる栄養不足ではなく、男性ホルモンと遺伝が関与する進行性の「疾患」であるためです。AGAの根本的な原因は、男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5αリダクターゼという酵素の働きによって、より強力なDHT(ジヒドロテストステロン)に変換され、このDHTが毛根の受容体と結びつくことで、髪の成長期を短縮させてしまうことにあります。このメカニズムを断ち切るためには、5αリダクターゼの働きを阻害するフィナステリドや、毛母細胞を直接活性化させるミノキシジルといった、医学的に効果が証明された「医薬品」による治療が不可欠です。一方、サプリメントは法律上「食品」であり、病気の治療効果を謳うことはできません。ノコギリヤシのように、5αリダクターゼの働きを穏やかに抑制する可能性が示唆されている成分もありますが、その効果は医薬品とは比較にならず、科学的なエビデンスも限定的です。サプリメントだけで対策しようとすることは、進行し続けるAGAに対して、栄養補給という間接的なアプローチしかできていない状態です。その間に、AGAは着実に進行し、毛根のミニチュア化(矮小化)が進んでしまいます。手遅れになる前に医薬品による治療を始めていれば守れたはずの毛根が、サプリメントに頼っている数ヶ月、数年の間に、回復が困難な状態になってしまう可能性があるのです。これが、過度な期待が招く最大のリスクです。サプリメントは、あくまで医薬品による本格的な治療の「補助役」です。その正しい位置づけを理解し、過信しないこと。それが、後悔しないAGA対策の鉄則です。